ぴんぴんコロリって理想なの?

 少し前ですが、90歳代の女性Kさんの話です。

 2年前に心不全のため呼吸困難となって入院したことのある方でした。病名は高度の 大動脈弁狭窄症です。本来なら手術をするところなのですが、年齢や自覚症状、本人の考えなどから手術はしないことになっていました。2年前は夫も生きてお り、病状の説明もしてありましたが、子供は遠方にいるとのことで、見舞いにも来られませんでした。外来では毎回独りで来院されていました。「なんでこんなに長生きしとるんやろね。はよう、お迎えがくるよう毎日お祈りしておるん。」と毎回話をしてくれていました。

 最近は旦那さんも他界し、独 居生活を営んでいましたが、ヘルパーさんが自宅に訪問すると、Kさんが心肺停止状態で発見されました。救急隊が到着し、心肺蘇生を開始。救急車で当院へ搬 送されてきました。もう充分生きたし、心肺蘇生なんてすることはKさんに対する裏切り行為にしか思えませんでしたが、医師という職業上、勝手に救命を断念できません。喉の置くまで管(気管チューブ)を入れて、強制的に身体に酸素を送り込み、心臓マッサージをしながら、強心剤などを注射で使用しました。治療 の甲斐もなく、Kさんの心臓は一向に脈を打つこともなく亡くなりました。

 喉の奥まで管を入れられて、肋骨が時には折れるほど押され、点滴 されて・・・。いつも思うのですがもう充分生きたと考えている人が、病気で亡くなっていくときにどうしてこんな処置をしなければならないのか?本当にみんなに考えて欲しいと思います。大切なのは救命できるか?ではなくて、幸せかどうか?ということですよね? 患者さんが急変したときに治療方法を決めるのは家族です。家族はもっと年老いた親の治療に関心を持つべきです。どうやって死 ぬことがいいのか?積極的な治療で報われるのか?医者任せにしないで考えるべきだと思います。

 人に迷惑をかけることもなく死んでいくことが理想だなんて、寂しすぎます。先日、お母様が、くも膜下出血で亡くなられた方が病院にきたときに話していました。「もっと世話をさせてもらいたかった。こんな急に逝ってしまうなんて寂しすぎる。自分の親の介護なんてちっとも嫌じゃないのに」と。